1塩基の変異が、タンパク質にどんな影響を与え得るのか、の予測アルゴリズムです。
今までPolyPhenとかGrantham Scoreとかについて少し触れましたが、今日はSIFTというアルゴリズム&ツールについて。
http://sift.jcvi.org/
???
そもそもtolerant とは何でしょう?
辞書で引くと寛容な、とか耐性、とかがあります。
ここではタンパク質の機能に変化が無い、ということを意味します。
SIFTの考え方の基本は、配列保存性です。
同じタンパクファミリーの中で、保存性の高いアミノ酸配列があったとします。
そのような配列の中のアミノ酸変異・置換は、タンパク質の機能に致命的な影響を与える可能性が高いと思います。
機能を失ったタンパク質は、進化の過程で生き残れませんね。
反対に、タンパク質機能に重要な影響を与えない部分のアミノ酸ならば、進化の途中でどんどん置換が起こり得るだろうし、またそのような機能に影響の無い場所のアミノ酸置換は、生き残っているタンパク質にも見られるはずでしょう。
つまり、配列の保存性が高い場所のアミノ酸置換は、タンパク質機能の変化という点でIntolerant(影響あり)。
配列保存性の低い場所のアミノ酸置換は、タンパク質機能変化にTolerant(影響なし)。
この方法は、正しいタンパク質ファミリー(オーソログタンパク)を集めてアライメントすることが重要です。その中で配列保存性を見ていくからです。
UniprotやNCBIのnrなどから配列データを借りています。
さて、このように配列相同性のみを使用した予測ツールでは、タンパク質の立体構造までは見ていません。
ループ構造部分に変異があるのか、疎水性が失われるのか、といった情報までは見ていないのです。
これらは別の予測ツール(Polyphenなど)が必要です。
NGSでSNVを見つけた。
Non-synonymousのSNVを絞り出した。
次に考えるのは、そのnsSNVの重要性です。
そのアミノ酸が変わったらタンパク質として生き残れないよ、という情報は、重要性の指標になります。
そのアミノ酸が変わっても、タンパク質は生き残っていたのなら、その置換はさほど重要ではないでしょう。
最初にSIFTなどで、配列保存性を基準にnsSNVの重要性をフィルターにかけ、残った重要そうなやつを、次にタンパク質立体構造上で確認していく方が近道のような気がします。
さて、実際にNGSでSNVを見つけてからこのツールを使って解析するにはどうしたら良いか?
先にURLを示した場所よりも、以下から入る方がお勧めです。
VCFフォーマットをSIFT専用のフォーマットにコンバートしてくれるからです。
http://sift.bii.a-star.edu.sg/www/SIFT_intersect_coding_submit.html
ここで、SAMtoolsなどで求めたVCFファイルをアップします。
そうするとしばらくして、コンバートされたファイルができますので、これをPCに保存します。
SNP用のファイルと、InDel用のファイルの2種類できます。
ここではSNP用ファイルを例に、落とします。
保存したら、upload here のリンクをクリックして、そのファイルをアップロードします。
その時、自分のE-mail アドレスと、オプションでどんなアノテーションを付けたいかを指定します。
結果は、HTML、またはテキストで参照できます。
これがSNPの結果
リンクできるところはそれぞれのDBにリンクしています。
HTMLだと、ちょっと扱いにくいので、私はテキスト(tsv)で落として、Excelで見ることもお勧めします。
例えば、こんな風に絞り込めば、新規っぽいSNPの機能を予測できます。
- dbSNPに登録の無い "novel" SNPで
- アミノ酸置換をもたらす Non-synonymous SNP
その時、ScoreとMedian Infoにも注目します。
Scoreは0から1の値を取り、0.05以下のとき、タンパク質機能に影響あり(=Intolerant = Damaging)とされます。
Median Infoは保存性の信頼度で、0から4.32の値をとり、大きいほど信頼度が低くなります。 3.25以上のときはLow confidenceとして警告が出ます。
どうでしょう? SNPの機能を調べるにはとても使いやすいツールだと思います。
もっと詳しく知りたい方は、
http://sift.jcvi.org/www/SIFT_help.html
Kumar P et al. Predicting the effects of coding non-synonymous variants on protein function using the SIFT algorithm. Nature Protocols 4, 1073-82 (2009).
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