2010年9月23日木曜日

シーケンサーの種類 まず簡単にちょっと

ライフテック、イルミナ、ロッシュ、この3社で日本の高速シーケンサーの市場を独占していると言ってもいいだろう。 あと理研にはヘリコス(Helicos)のHeliscopeがある。

販売戦略としては、ライフテック、イルミナ、ロッシュの3社には共通点があり、大型の高性能マシンと、小型の汎用マシン という2種類のラインアップを用意している。
2010年9月の時点では、ライフテックは最新バージョンの高性能マシンSOLiD 4Hqと、近日リリース予定の汎用マシン SOLiD PIを揃えている。
イルミナは最高機種のHighSeq2000, 世界で最も使用されているGenome Analyzer IIx, IIxより低価格でスループットは若干落ちる IIe, アレイスキャナーがついているHiScanSQの4機種がある。
ロッシュは今までの454 FLXに対し、1,500万円台で買えるGS Juniorをリリース、今月大体的にセミナーを開催していた。
汎用マシン、SOLiD PIとGS Juniorはベンチトップ型。 GS Juniorはシーケンサーと解析サーバーも付いてこの価格は安いか。ちなみにSOLiD PI は日本リリースはまだだが、23万ドルくらいだろう。

シーケンサーのデータ量、マッパブルリードの数、などの正確な数はメーカーのサイトを確認していただくとして、特徴は各メーカーが採用しているテクノロジーに依存する。

ライフテックは、SOLiD: Sequencing by Oligo Ligation Detection の名前の通り、ポリメラーゼではなく、ライゲースを使って配列を読む。 それより大切なことは、出力データはATGCの塩基配列ではなく、4色のカラースペースを0,1,2,3の数字に変換した数列だということ。 そして1つの数字は2つの塩基に対応するということ。 カラースペースに関しては別途、書くとして、そのような数字の配列が、あたかも塩基配列のようにMulti-FASTA形式で出力されるのがSOLiDの特徴。
で、SOLiDのリードは、短い。 長くても50-merくらいがクオリティの限度だという。
短さの欠点は、ハイスループットでカバーするので、読めている場所のクオリティは高い。
しかし、読めない箇所も多い。 ショートリピートやInDelに弱い。 ということは、SOLiDの得意なところは、配列がわかっている箇所のリシーケンス、あるいはマッピングで、特に、SNPの検出、発現の解析、に威力を発揮する。 反対に、リファレンス配列が無い時の解析は非常に難しい。
余談だが、SOLiD PIはカラースペース以外に塩基配列も出力するらしい。
また先日、第3世代のシーケンサー、1塩基シーケンサーを来年リリースすると発表した。 今年の分子生物学会に、公開しないかなあ。

イルミナはSolexaのSequence by Synthesisというテクノロジーを使って、1塩基ずつ読んでいる。 これは塩基配列が出力される。 しかしこのリードも短い。 
長所・短所はSOLiDと同じだが、Genome Analyzer を使用した論文が多いので、その分使う側にとっては情報が得やすくて良いだろう。
イルミナは現時点では圧倒的なシェアを誇っているが、将来のことはわからない。 恐らくライフテックと同様、1塩基シーケンサーに手を出すのではないか。 資金も潤沢だし、ナノポアテクノロジーなどの会社を買収してもおかしくない。
今は、イルミナの以前からの技術であるマイクロアレイとの共存を推し進めている気がする。
イルミナは歴史的に、SNPアレイが強い。 ジェノタイピングやマーカー探索にまずシーケンサーで新規なものを探し、アレイで大規模に確認するというプロトコールを考えているのか。

ロッシュの454(GS Juniorを含む)は、Pyrosequencingという方法を採用していて、これはAAAAAとかGGGGGとか同じ塩基が連続するときにその数を間違えやすい、という欠点がある。 しかし、400-mer以上を安定して読める高速シーケンサーは、今のところロッシュの454のみ。 これは大きなアドバンテージで、デノボシーケンスには欠かせない。 発現解析にも、エキソンスプライシングを検出するには不可欠だ。
ロッシュは長いリードを読めることが武器だ。 汎用マシンをリリースしたことで、今のラボのサーマルサイクラーくらいにまで、一般的な機器にしたいのだろう。 価格がもうひと桁落ちればそれも不可能ではない。

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