只今、CBI学会(Chem-Bio Informatics学会)に来ています。
日立ソリューションズのブース&プレゼンで、面白い技術を見つけました。
Optical Mapping というものです。
アメリカでは数年前から導入されていたようですが、このたびマシーンが完成して日本では初めて発表されました。
その名も「全ゲノムソリューション」
外挿遺伝子やリピート領域の同定、ゲノム構造の解析、高精度な菌株同一性に威力を発揮するといいます。
OpGEN 社のテクノロジーは、簡単に言うと全ゲノムレベルで制限酵素のマップを作ることにあります。
測定原理は、
- 菌体から長い(200kb以上必要だそうです)ゲノムDNAを抽出し
- ガラス基板上に並べて固定し、
- 制限酵素(1種類)でDNAを切断し
- 蛍光により切断断片の長さを測定
- 制限酵素マップをもとにアセンブルして、全ゲノムの制限酵素マップを作る
詳しくはこちらのページ
DNAを基板に固定してから制限酵素で切っているので、ばらばらにはならず、Cuttingの位置情報が得られる、というのが重要な点です。
制限酵素のマップを作って、これが次世代シーケンサーの解析にどう役立つかというと、今までのショートリードによるde novo アセンブルは、どうしてもうまく読めないところや、リピートや外からの挿入遺伝子配列などがちゃんとつながらない、という問題がありました。
コンティグはできてもそれがつながらないということです。
それを補正する形で、あらかじめ制限酵素マップという物理的な地図を作り、これをもとにしてアセンブルしたときのコンティグをアライメントしていく、というのがこの技術の良いところです。
Optical Mappingでは、制限酵素のマップはできますが、これには塩基情報はありません。
あるのは一つの制限酵素が切った場所、の情報です。
では、どうやってこの制限酵素マップと、NGSからの配列情報、de novo Assemblyで出来たContigをアラインさせるのでしょうか?
答えは単純でした。
ある一定の長さを持つContigの中の、制限酵素Cutting部位を検索し、Contigひとつひとつに制限酵素マップをつくります。 これは付属のソフトで出来るそうです。
このContig内の制限酵素マップを、Optical Mappingで求めた全ゲノムマップに対してアラインしていくと、Contigに含まれる配列情報が全ゲノムマップに反映される、ことになります。
普通のNGSの感覚では塩基配列を基にアラインすると思ってしまうのですが、これは制限酵素のマップ(Cuttingの場所情報)を基にアラインするのです。 へぇー
実例として、あの大腸菌O-114のゲノムを紹介していました。
PacBio、Ion Torrent、Illumina 等で読まれたデータのContigは、すべてOptical Mappingで作った制限酵素マップがカバーしていました。
現在はバクテリアサイズのゲノムに対応しているそうですが、本国ではヒトゲノムサイズのマップにも成功しているそうです。
最近のモントリオールの人類遺伝学会でも発表したそうですが、普通の(遺伝病などを持たないという意味でしょうが)白人男性の全ゲノムをこの制限酵素マッピング技術で読んで、既知のゲノム配列の制限酵素マップと比較した結果、なんと
- 22番長鎖に240kbのInsertion
- 8番短鎖に4.5MbのInversion
こんなに大きな変異が普通にあったとしたら、今のリシークエンスに使っているUCSCのHG19とかの既知ゲノム配列って、何なんだろう、って思いました。
我々が「既知だ」、と思っているヒトゲノムのリファレンス配列が、人によって数メガ塩基の単位で異なるとしたら、 このリファレンス配列にReadをMappingしているだけでは、染色体の構造変化を見つけることはできません。
ドラフト配列だらけの非モデル生物ゲノムについては、言うまでもありません。
改めて、染色体構造を物理的に知ることの重要性を確認しました。
なお、この技術やマシンについては日立ソリューションズさんにお問い合わせください。
きっと親身に説明してくれると思います。
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