2011年5月5日木曜日

NGS解析有償ソフト: 買う価値はあるか (前編)

「無い!」
と自信を持って言った方は、相当バイオインフォに強いか、フリーツールを熟知しているか、そういうツール自体が大好きか、あるいは前に痛い思いをしたか、でしょう。

 
私は立場上、「無い」とは言えませんし、実際お金で解決できることもあるのは事実です。
大抵の有償ソフトはGUI、つまりグラフィカルに操作でき、難しいコマンドラインは必要ありません。
NGS解析は面倒で大掛かりだ、という先入観を見事に打ち砕いてくれます。
ドライの研究者向けではなく、ウェットの研究者向けに設計されているからです。

 
フリーのツールはLinux、コマンドライン、自己責任、といういばらの道が存在し、慣れればそれで楽しいのですが、ウェット研究者にとって敷居は決して低くありません。
そんな時にふと出会った有償ソフトは、その昔、Windows95が登場したときのような、NGS解析でのPlug and Playを見事に実現してくれる! ように映るのです。

 
しかし、です。
NGS有償ソフトは、全てのNGSウェット研究者に普及させるため、わかりやすく、使いやすい機能を載せました。
当然ながら、NGS有償ソフトは売って利益を出さなければいけませんから、最も良く使われるであろう機能から順番に、製品開発リストに取り入れてきました。
できるだけ多くの顧客を獲得するため、できるだけ多くの解析手法は取り入れたい。
しかし開発コストとの兼ね合いから優先度を付け、有名な解析手法は必須とし、マイナーなもの、解析手法が複数あるもの、まだ新しくて一般的では無いもの、は後回しにする。

 
そうすると、どのソフトも皆、RNA-Seq、ChIP-Seq、SNV-InDel、という良く使われるアプリケーションを搭載することが大事になります。
他社との差別化には、ビューワーや、外部データとのリンク、関連遺伝子の機能検索、フリーツールとの融合、という、NGS解析の本筋とは別のプラスαで勝負することになります。

 
誤解の無きように言うと、有償ソフトでは、NGS解析の本筋でも差はあります。マッピングの速さとか、SNP検索のアルゴリズムの違い、の違いなどです。
しかし、他社製品との大きな差は、今やアルゴリズムというよりも、
  1. 解析の進め方や見せ方、結果出力の簡単さ
  2. マイクロアレイなど他の実験結果との統合
  3. 検出した発現量やChIP-PeakやSNPなどからバイオロジカルな意味づけ

 
といった、3次解析以降の部分に開発力を注いでいるように思います。
有償ソフトの購入を検討されている方は、RNA-Seqができる、ChIP-Seqができる、という謳い文句ではなく、どう表示されるのか、その後は何ができるのか、プラスαの解析にはどんなものがあるか、という点に最大の関心を持って頂けると判断しやすいと思います。 
これだけ研究目的が多岐に渡るNGS解析は、自分の目的に合わなければ買う価値はありませんが、ぴったり合うのもまた無いと思った方が良いでしょう。

 
そんな有償ソフトで最近、気になっているものがあります。
偶然私の知り合いが米国でセールスをやっていることを知ったのですが、日本ではAgilent社がAvadis NGSという名前で取り扱っています。

 
http://www.avadis-ngs.com/features/introduction

 
中編につづく・・・

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