Sequence by Oligo Ligation and Detection というユニークな手法のシーケンサーを初めて見たのが2007年の分子生物学会だった。 最初、本当にこんな方法で配列が読めるのかな、って疑問に思ったひとは多かっただろう。 そして、何度聞いても、ツーベースエンコーディングの仕組みを忘れてしまう。
僕が学生の時は、シーケンスといえばサンガー。 これだけ覚えればゲルもキャピラリーも同じだった。 ところが今や、PyrosequenceからSequence by Synthesis、SOLiDと、次々に増えて、そのうち第3世代、第4世代と…ああ、覚えられないよー!
さて、今日はSOLiDに絞る。 理由は、僕が最初に見た第2世代シーケンサーだから。
2010年10月現在の最新機種はSOLiD 4 hq
この表はSOLiD4のもの。 SOLiD4のリンク先
hgはこのバージョンアップ版で、驚くべきはそのスループットで、この表の3倍、最高300ギガベースが1ランで出せるらしい。
ヒトゲノムが30億塩基対、つまり3ギガ。 その100倍だ!!
ついでにライバルのイルミナHighSeq2000はこの通り
最高200ギガを可能にしている。
SOLiD4hqとHighSeq2000、どちらもこれ以上スループットを上げることは厳しいか?
違いはサンプル調整の最後、DNAフラグメントの増幅方法にある。
SOLiDはエマルジョンPCRといって、ビーズにフラグメントを結合させてPCR増幅を行い、そのビーズごとガラススライドの穴に固定させる。 (引用:Metzker (2010) Nature Reviews Genetics v11, 31)
これはロッシュの454と同じ方法だ。 SOLiDはこのスライドの穴をより高密度にすることで、スループットを上げてきた。
イルミナのGenome Analyzer、HighSeq2000はPCRをスライドの上で行う。 ブリッジ増幅というこの方法が特徴だが、この方法は物理的にスライド上に結合できるフラグメントの数が制限されてしまう。 そこでHighSeq2000では、スライドを2枚に増やし、上下に配置することでスループットを上げた。
さて、話をSOLiDに戻す。 ライフテクノロジーズ社、旧アプライドバイオ社のホームページは、情報の宝庫だ。 ほとんどの資料が無料で手に入る。 たとえ顧客で無くてもだ。
ここから先もそんなものから引用し、編集している。
SOLiDの一番の特徴は、そのシーケンスの方法だ。 ポリメラーゼを用いないとは!
(以下、ライフテック社のホワイトペーパーを元にコメント)
詳細は、メーカーのこのホワイトペーパー をご覧いただきたい。 ひじょうに細かく、かつ分かりやすく書かれている。
想像するに、SOLiDの方法は発売当初、なかなか世間に受け入れなかったのだろう。 何しろデータがATGCの塩基配列ではなくて、0123の数字なのだから!! 研究者にとっては扱いにくいことこの上ない。
2年前、ある学会でSOLiDのデータを「信頼に足らない」と言っていたある人がいた。 2年前と言えばまだソフトウェアも未熟で、PCのスペックも低く、そもそもSOLiDの特徴を完全に理解している研究者もいなかったのかもしれない。 その先生の発言力は国内ではそこそこ大きかったので、SOLiDがいまいち使いにくい、という評判が広まってしまった感がある。 しかし、僕の感じる限り、データ解析に関してはそんなことはない。 精度は高いし、スループットも十分だ。
今はカラースペースの0123情報でも十分扱えるソフトウェアがある。 PCのスペックも上がった。
それに、ここが一番大事だが、ライフテクノロジーズジャパン社の社員は、顧客満足度を上げようと態度で示している。 営業、マーケティング、サポート、と皆、お客さん以外にも親切で、情報公開をしている。 もし、旧アプライドバイオ社にあまりいい印象をもっていないひとがいたら、過去のことは水に流して欲しい。 あまり贔屓にすると関係者じゃあないかと疑われるのでこの辺に。
あと、SOLiDの利点は、ランニングコストが安いこと。 なぜって、インビトロジェン社と合併したおかげで試薬代がほとんどタダになったから。
今や、ギガベース当たりいくら、っていう価格で比較するとSOLiDがダントツ安い。 パーソナル1000ドルゲノムに達するのもSOLiDが一番かもしれない。
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