皆さん、
SOPHiA GENETICSという会社、ご存じですか?
スイスに本社があり、ヨーロッパとアメリカ大陸を中心に、55か国にビジネスを拡大したクリニカルシークエンスのベンチャー企業です。
ITのスペシャリストを集めて始めたこの会社は、最初は他の多くの解析ベンチャーと同じく、NGSのデータをマッピング⇒SNPコーリング⇒変異解析、そしてアノテーションという解析パイプラインをクラウド上で行うシステムを作っていました。
この会社がわずか3年で400の病院にシステムを導入し、クラウド上で登録している患者さんのサンプル数は約17万人分に達した理由は、他の企業にはあり得ない、データシェアリングというアイデアをシークエンス解析に応用していること!
なんと‼ データシェアリング⁉ を、クリニカルシークエンスに応用⁉
データシェアリングといっても配列ファイルをシェアするわけではありません。
このクラウド上の解析パイプラインは、
SOPHiA DDM (Data Driven Medicine)と呼ばれます。
ユーザはFastqファイルをSOPHiA DDMクラウドにアップします。
するとアライメント、SNVs検出、変異解析は自動で行われます。
変異解析に必要なのは、見つけた変異に疾患関連性があるか無いか?ですよね。 pathogenic, begin, unknown significance とか、聞いたことがあるひともいると思います。
この疾患関連性のアノテーションは普通、健常人でも見られるSNVsをフィルタリングした後、世界中の「変異と疾患の関連性」データベースに照らし合わせて行われます。
一般的なのは、ClinVarなど信頼ある公共データベースをもとに、既知のPathogenicisty情報をアノテーションする方法。
今までの考え方では、他のユーザがアノテーションしたSNVs情報は、そのユーザまたは共同研究機関の内部だけでシェアされるのが普通でした。
ところがSOPHiA DDMの中では、全世界のほかのユーザがアノテーションし、判断したPathogenicistyの情報をシェアできるのです!
ACCESS TO CLINICAL GENOMICS COMMUNITY
SOPHiA GENETICS has built the World's Largest Clinical Genomics Community with hundreds of institutions worldwide participating in the democratization of Data-Driven medicine. Through SOPHiA DDM, thousands of experts can easily interpret the variants and flag them with the appropriate level of pathogenicity. This highly valuable information feeds the variant knowledge base and is anonymously and safely shared among the members of the community.
もちろん、ユーザがアップロードしたサンプルの配列情報や、患者情報、疾患情報はシャアされません。
シェアされるのは、「遺伝子Aの変異Vが、疾患などのフェノタイプDと関連する」というアノテーション情報のみ。
この情報と数多くの公共DB情報、さらに日々追加される膨大なNGSデータ、これらを今はやりのAIで解析し最高精度のアノテーションを行うのが、SOPHiA DDMです。
そうなってくるとデータのセキュリティが心配になりますよね。
でもそこは心配ご無用! 世界で最も厳しい、EUの一般データ保護規則(GDPR: General Data Protection Regulation)に準拠しているそうです。
さらにISO 13485(医療機器・体外診断用医薬品)、ISO/IEC 27001(情報セキュリティ)も取得済み。
このビジネスモデルは、ヨーロッパやアメリカではかなり受け入れられており、今イケイケの成長企業です。
ビジネスの範囲もデータ解析だけでなく、上流の疾患遺伝子パネルの開発や、トレーニングの実施、顧客ラボのISO取得コンサルティングなど多岐にわたっています。
ちなみに2017年の
50 SMARTEST COMPANIESで見事30位になっていますよ!
(テスラモーターが31位、オックスフォードナノポアが32位、マイクロソフトが27位)
クラウドでのクリニカルNGSデータ解析ということと、変異解釈のデータシェアリングというアイデアが、日本ですぐに受け入れられるかどうかはわかりません。
ですが世界では確実に主流になっていくような気がしました。私の勘ですが。