2011年2月16日水曜日

プレゼンの反省

この間、私の属する会社の主催でNGSの解析セミナーがありました。知っている方もいらっしゃると思います。

私の前のプレゼンターの方々が、フリーツールの使い方を述べ、商用ソフトCLC-Bioの紹介があり、さらにシーケンスメーカー3社のプレゼンあり、と、これだけでも充実していたと思います。

私のプレゼンは、会社の意向もあり、「数種類のマッピングソフトを使ったときのChIP-SeqPeak Detection後の解釈」というものでした。 (ちなみに私の後は、「RNA-Seqとその後の機能解析」)
後の反省会で、いろいろ考えてしまいました。

質疑応答時間がなかったのは残念でした。 プレゼンしながら質問が飛んでくるようなスタイルが好きですが、大人数ではちょっと・・・無理ですね。 スケジュールの都合上とはいうものの、質問時間は取るべきでした。 フィードバックが得られないのは大変残念。 これは大失敗です。 

私のプレゼンの流れとしては、公共のChIP-Seqデータを落としてきて、これをHg18にマッピングして、Peak検出して、Peakを絞り込んで、絞込み後の近傍遺伝子をさらに絞り込んで、その近傍遺伝子の機能を調べて、という感じです。

マッピングソフトをBWABowtieCLCの3種類を使って比較したのですが、いまいち伝わりませんでした。 前のプレゼンターが、BWABowtieCLCも、パラメータなどを説明していたので私は省略したのですが、それがまずかった。 聞いている方は、適当にやった結果か?と疑問を抱いてしまうかもしれません。 やはり比較するならきちんとそのときのパラメータ条件を述べるべきだったでしょう。
というか、そもそも今回の場合、マッピングソフトを統一して、ChIP-Detectionソフトを変えて比較した方が、聞いている側からするともっとわかりやすかったかもしれません。 私も後でそれに気がついたのですが、プレゼンに間に合いませんでした。

プレゼンは本当に難しいです。 聞いている側の心に響く、印象に残る、メッセージを送らないといけませんね。
これは何のプレゼンなのか、をはっきりと示すことが大事です。
あと一回、明日同じ内容を喋らなければいけません。少し内容を変えました。ちょっとはわかりやすくなったかな。 

次やるときはもっとマニアックな、実践的な、実データを使った解析例をプレゼンしたいと思います。
お題は、・・・ 得意な(?)、というか好きな、
  1. RNA alternative splicing
  2. Copy Number Variant detection
  3. De novo transcriptome
  4. Chromosomal translocation

がいいかな。 会社がOKくれればの話ですが。
これら4つは、普通の商用ソフトではかなり困難なものです。 でもフリーツールやメソッド自体はありますので不可能ではありません。 はてはて、どれに優先度を持っていくか。

Splicing variantExon ArrayCNVSNP/CGH arrayという既存のテクノロジーがありますので、興味あるひとが多いでしょうか。 
De novo transcriptomeは、参照配列未知の生物のRNA-Seqという、次世代シーケンサーならではの解析ですし、個人的には大好きな分野です。
Chromosomal translocationは、最近面白いソフトを見つけました。 そのうちここでも紹介します。





2011年2月9日水曜日

ChIP-Seq、RNA-Seqの良いレビュー

私がこのNext-Genの配列解析を本格的に始めてもうすぐ1年になります。
それまでは主に情報収集で、各種シーケンサーメーカーのセミナーに出席したり、PubMedで文献を探しては読んだり、ネット上の掲示板を参照したりしていました。

解析ツールを使って、実際のデータや、SRAからダウンロードしたデータを流していると、ふと、自分のやっている方法が正しいのか、他のひとはどうやっているのか、考えてしまいます。
どのツールを選ぶか、は最も重要な問題だと思います。 
そんな中、このレビューは良くまとめられています。
Computation for ChIP-Seq and RNA-Seq studies. Pepke et al. (2009) Nature Methods v.6 S22

ChIP-Seq, RNA-Seqの解析方法から良く説明されており、初めての方はこの文献を読まれることをお勧めします。

もうひとつ、私がすきなレビューは、こちらです。
Statistical Issues in the Analysis of ChIP-Seq and RNA-Seq Data. Ghosh et al. (2010)Genes v.1 p317
バイオロジカルな視点からChIP/RNA-Seqの限界や、解析方法の問題点なども述べられています。
勉強になります。
RNA-Seqなどの結果の解釈の前に、一度読まれることをお勧めします。

2011年2月2日水曜日

SNP検出のアルゴリズム2

SNP検出で前回、NQSを書いた。
クオリティスコアについては、様々な閾値で設定することができるが、文献で見たことがあるのは、
“11-base NQS 20/15 threshold”
というもの。
これはSNP検査対象の塩基を中心に前後5ベース、の計11ベースのクオリティを見て、
中心は20、前後5ベースは15、以上あるとき、の中心塩基を検査する、というもの。
先のCLC-Bio Genomics Workbench を例にしたときのデフォルト。
NQSは次世代シーケンサーの前から良く使われていたらしい。

Shen Y, Wan Z, Coarfa C, Drabek R, Chen L, Ostrowski EA, Liu Y, Weinstock GM,
Wheeler DA, Gibbs RA, Yu F.
A SNP discovery method to assess variant allele probability from next-generation resequencing data. Genome Res. 2010 Feb;20(2):273-80. Epub 2009 Dec 17. PubMed PMID: 20019143

僕もこの閾値が絶対だとは思わないので、いろいろ変える必要はありそうだ。

実はSNP検出に関して、この閾値よりももっと大事なのは、マッピングするときのアルゴリズム。
つまりギャップありマッピングか、ギャップなしマッピングかで、結果は大きく変わってくるのだ。
ギャップありの場合、1塩基単位のInsertion、Deletionも検出可能になる。
ギャップありマッピングは、BWAなどで可能だが、精度が高い分ランに時間がかかる。
しかし小さいInDelを検出できるとともに、SNPの擬陽性確率が低いという報告もある。
昨年末のBMBでもあるポスター発表者と話したのだが、BWAなどのギャップありマッピングは、SNP検出時に行うマッピングとしては、Bowtieなどのギャップ無しマッピングと比べて優れているそうだ。

ちなみに有償ソフトのNextGENeも、ユニークなSNP検出アルゴリズムを用いている。
計算式が複雑すぎて僕は理解できないが、興味のあるひとはのぞいてみると良い。
http://www.softgenetics.com/NextGene_UsersManual_version_2-0.pdf
114ページ、Overall Mutation Score の章から先

2011年1月21日金曜日

SNPの検出アルゴリズム

Single Nucleotide Polymorphism(SNP:1塩基多型)は、遺伝学では疾患マーカーとして良く研究される分野である。 たった1塩基の差が、その病気を決定づけたり、ある薬の効果を全く無くしたり、あるいは重篤な副作用をもたらしたりするからだ。

実際、その塩基の差が、病気や副作用に関係するかどうかは、遺伝統計学の力でなんとか証明するのだけれど、それはここではひとまず置いておいて、その「塩基の違い」はどうやって見つけるのかについて考えてみよう。 もちろんシーケンスからだ。
そう、始まりはいつもマッピングファイル。

SNPの検出は、マッピングされた後のデータから始める。
有名、というか一般的な方法に、NQSという手法がある。これはNeighborhood Quality Standardの略で、リファレンス配列にマッピングしたときのリードのクオリティスコアをもとにSNPを判断する方法だ。

参考になるのはこの文献
Brockman et al. Quality scores and SNP detection in sequencing-by-synthesis systems. (2008) Genome Res. 18, 763-70. (PMID: 18212088)
ここで提唱されている手法は、多くの論文でも採用されているし、いくつかの有償ソフトでも基本的なところではそのままデフォルトになっている。 ここから先は、そんな有償ソフトの一つ、CLC-Bio社のGenomics Workbenchを例に説明しよう。

先ず、リファレンスにマッピングされている複数のリードを想像して欲しい。 そのリード配列のあるところの塩基がAで、同じ場所のリファレンス配列の塩基もA、ところが複数あるリードのなかには、その場所がCのものもある。さて、この塩基が、SNPであるかどうか?


一番上はリファレンスで、その下にたくさんあるのがマップされたリードの配列だ。
真ん中の縦の列に注目して欲しい。このAとCがSNPであるかどうかを判断するために、リードの各真ん中の塩基の、右と左の塩基のクオリティスコアを見る。

ここから先、クオリティスコアなどの閾値の例を示す。
上の絵の横のハイライトを見て欲しい。
CATAT A AATAA と、真ん中のAを中心に右に5つ、左に5つの塩基がハイライトされている。
この左右10個の塩基のクオリティスコアの平均が、最低15以上でなければならない。
また、中心の全ての塩基のクオリティスコアは、最低20でなければいけない。
これら5+5+1、計11塩基のことを、Windowサイズ11と呼ぶ。

さらに条件を加えるならば、同Windowの中にはミスマッチ・ギャップが2つ未満でなければいけない。
これらの条件から外れた場合、そのリードは、この箇所の塩基において(真ん中の縦の列)、SNP検出の候補にはならない。
また、縦の列、中心の塩基すべてのクオリティスコアが最低20に満たない場合、この塩基はSNP判定の対象にならない。

ここで、SNP判定の対象になる塩基と、その塩基の判定に用いられるリードが残るわけだ。
SNP判定には、
1.何本のリードがカバーしているか
2.その変異は、全体の何%必要か、あるいは数はいくつ必要か
などを基準に決められる。

このようにして検出されたSNPは、リストになって出力され、どのSNPがアミノ酸置換を起こしたか、などが参照できる。

フリーのソフトは、僕はまだ試していないが、やっているひとはいる。
先の文献、一度PubMedで調べて、その文献を引用している論文を見てみると、フリーツールが見つかるのではないか。
NQSは結構有名なのだ。

2011年1月20日木曜日

イルミナも小型シーケンサーをリリース

イルミナと言えば、最高クラスのスループットを誇るHiSeq2000、HiSeq1000、そして導入数世界一のGenomeAnalyzer IIx が有名。
ライバルのライフテックがIon Torrentをリリースしたのと時期を同じくして? イルミナからも小型・パーソナルゲノムシーケンサーがリリースされた。
http://www.illuminakk.co.jp/product/system/miseq.shtml
その名もMiSeq (マイセックって発音?)

シーケンス方法はSequence By Synthesis、反応と同時に読む。一回ずつ反応を止めて蛍光を読み取る。 
つまり第二世代シーケンサーの特徴であるWash-and-Scanを踏襲している。
世界中のGenomeAnalyzerと同じ原理だ。 逆に言えば、今までの安定した信頼性を担保しつつ、小型化に成功した。

シーケンス時間が、数日から数時間に短縮された。
フローセルの大きさがHiSeqの10分の1になったためか。
データアウトプットはGbに届かない。少なく感じるが、タイピングやターゲットが決まっている時など、目的によってはこれでも十分なこともある。
価格は不明。今年のブレイク製品になるか。

2011年1月17日月曜日

2.5世代シーケンサー Helicos - HeliScope

前のIon Torrentと並んで2.5世代シーケンサーとも言うべき、Second GenerationとThird Generationの間に位置しそうなシーケンサーが、Helicos社のHeliScope。

一昨年前の春、日本にHelicosのひとがセールスに来た。
バイオExpoか何かだったと思う。大勢の聴衆を前に、Single Moleculeの威力と可能性をプレゼンしていた。
その時の価格は、1台1億円だった・・・

さて、それから早2年。 日本には恐らく理研以外に入っていないと思う。
Helicos社も昨年経営が厳しくなり、大胆なリストラを行った。

シーケンス自体は、1分子を読むのでPCRを行う必要が無い。
これはSOLiDなどの第2世代シーケンサーとの大きな違い。
塩基読み取りには、化学的に塩基と切断可能な箇所に蛍光を付けてその蛍光を読み取る。
Vertual Terminatorと呼ばれる通り、蛍光読み取りごとに反応を止める。
反応を止めるのは、第2世代シーケンサーの特徴だ。
ということで、HeliScopeは2.5世代シーケンサーだ。

反応を1塩基読み取りごとに止めるので、リード長も短く、最長32塩基である。
数百万の各反応は、ばらばらに進む。これは第3世代の特徴だ。
生データのエラーは結構高く、5%以上あるそうだ。
スループットやランにかかる時間は第2世代シーケンサーと大差無いだろう。

Helicos社のためにも、利点を挙げよう。
PCRを使わないので、より「真実」に近い配列を測定できる。
また、このシーケンサーは、逆転写酵素を使用することでRNAを直接読める、らしい。

どうだろう?
HeliScopeは、第3世代シーケンサーの特徴である1分子シーケンスを売りにしているが、いかんせんリード長が短く、第2世代と比べてダントツに優れたアドバンテージが無い。
市場に出たタイミングも悪かった。
その時すでにロッシュ、イルミナ、アプライドバイオの3強が大きな資金力でシェアを広げていた。
また、Pacific BioSciences(PacBio)社やVisiGen Botechnologies社は真の第3世代シーケンサーの実現可能性を示すなど、「ちょっと待てばもっといいものが出てくる」感があった。

実際、PacBio社は2010年末に第3世代シーケンサーをリリースした。VisiGen社は2010年にLife Technologies社に買収されその技術はLife Techのブランドで近々リリースされるだろう。

悲しいかな、HeliScopeは日本では全くと言うほど導入されなかった。
代理店が無く日本語でサポートが得られないのが大きいか。
それとも価格が問題だったのか。
残念だ。テクノロジーは、素晴らしいのに。

2011年1月16日日曜日

2.5世代シーケンサー Ion Torrent Personal Genome Machine

ライフテクノロジーズ社が昨年末に発表した、半導体シーケンサ
Ion Personal Genome Machine(PGM )シーケンサー
http://www.appliedbiosystems.jp/website/jp/product/modelpage.jsp?BUCD=138106&PLCD=138105&MODELCD=138098

うーむ。コンパクトでよさそうだ。
Ion Torrent社が半導体テクノロジーを利用して開発したシーケンサー。
で、SOLiDとどう違うの? 価格は? データ量は? クオリティは?

こいつは半導体チップを使用している。
基本的にはSequence By Synthesis (SBS)で、塩基が取り込まれるときの水素イオンを検出する。
カメラは不要なのでマシーンは小さくて済む。
しかし、シーケンスにはDNAテンプレートのPCR増幅反応が必要で、その後ひとつの塩基が取り込むごとに反応を止める必要がある。これはSOLiDやIlluminaのシーケンサーでは一般的のWash-and-Scanと呼ばれる方法。
この方法の欠点は、読める長さが短くなること。
はっきりとはわからないが、アウトプットリードはおそらく数十ベースの長さだと思う。

データ量はどうか?
チップ1平方cmあたり、150万のセンサーを搭載している。
1時間で約1億塩基を読むことができるという。

ライフテック社でのこのシーケンサーの位置づけは、パーソナルという名前が付いているとおり、大型のゲノムセンター向けで無いことは明らか。
ディスカバリー目的というより診断目的に向いている。
ラボや病院、クリニック単位での導入を目指しているだろう。
日本ではどうかな?
もう買ったラボはあるのかな?